Claude in Excelで経理を回しています|プロンプトより社内ルールを渡すほうが効きました

Excelの表の横に、社内ルールを書いた紙が置かれている机の上のイラスト

結論:指示の書き方より、社内ルールを渡すほうが効きました

この記事で書くこと

・弊社は経理の担当者を置いていません。見積書・売上集計・経費・顧客リストは、これで回しています(確認と会計ソフトへの反映は自分たちの手でやっています)
・指示は普通の日本語で足ります。「プロンプトの型」を覚える必要はありませんでした
・代わりに効いたのが社内のルールを文書にして渡すこと。AIが間違えるのはExcelの操作ではなく、うちのやり方だからです
無料プランでは使えません。Pro(年払いで月17ドル)以上が必要です
・公式が「検証を経ずに動かせば、操られて機密情報を抜き出されうる」と警告しています。外部から来たファイルの扱いには注意が必要です

Excelの中でClaudeが動くようになって、しばらく経ちました。使い方を紹介する記事はすでにたくさんあるので、この記事では弊社が実際に何をやらせていて、何でつまずいたかを中心に書きます。

先にお断りしておきます。後半の使用感は弊社の業務での体感であって、条件をそろえた検証ではありません。仕様や料金は公式の情報から引き、体感の部分は「弊社ではこう見えている」という話として分けて書きます。

Claude in Excelとは(事実だけ、短く)

Excelに入れて使うアドインです。画面の右側にサイドバーが出て、そこに日本語で話しかけると、開いているブックを読んだり書き換えたりしてくれます。

名前が2つあるのは、どちらも公式だからです

検索すると「Claude in Excel」と「Claude for Excel」が混在していて紛らわしいのですが、どちらもAnthropicが使っている表記です。
現行の公式ドキュメントの見出しは「Use Claude for Excel」で、こちらが正式表記にあたります。一方で公式チュートリアルの題名は「Getting started with Claude in Excel」、Pro解禁を告知した公式SNSの投稿も「Claude in Excel is now available on Pro plans.」でした。どちらで検索しても同じものに行き着きます。

もうひとつ押さえておくと混乱しないのが、これはExcel専用の製品ではないという点です。「Claude for Microsoft 365」という製品のうち、Excel部分を指しています。

アプリ提供状況
Excel一般提供
PowerPoint一般提供
Word一般提供
Outlookベータ

この4つは会話の内容を共有できます。Excelで集計させた話の続きで、そのままPowerPointに資料を作らせる、といった使い方ができます。ただし設定でオンにする必要があり、Team・Enterpriseでは既定でオフです(Pro・Maxは既定でオン)。

Microsoft 365 Copilot とは別物です

名前が似ているので混同されがちですが、Copilotのライセンスは要りません。Microsoftが作った機能ではなく、Anthropicが出しているアドインで、契約するのはClaude側です。
ややこしいのは、Copilotの中身としてAnthropicのモデルを選べる設定も別に存在することです。こちらはMicrosoftとの契約で、使えるかどうかは管理者の設定次第です。名前は似ていますが、契約先も管理画面もデータの通り道も違います。後半で表にまとめます。

使える条件と料金

ここを間違えると入れられないので、先に確認してください。

プラン:無料では使えません

プラン使えるか料金(年払い)
Free使えません0ドル
Pro使えます月17ドル(月払いは20ドル)
Max使えます月100ドル〜
Team使えます1人あたり月20ドル(月払いは25ドル)
Enterprise使えます1人あたり月20ドル+従量

Excelのための追加料金はありません。いま契約しているプランの範囲で使えます。ただし専用の枠が増えるわけでもなく、普段のClaudeと同じ利用上限を分け合う形だと公式に明記されています。Excelで長い作業をすれば、そのぶん普段のチャットの枠が減ります。

ChatGPT版は無料でも使えます

同じようなアドインをOpenAIも出していますが、そちらは無料プランでも使えます(OpenAIがMicrosoftのストアに掲載している説明文に、Free・Go・Plus・Proと明記されています)。
またGoogleスプレッドシートに対応しているのはChatGPT版のほうです。Claude側はExcel専用で、スプレッドシートには対応していません。「まず無料で試したい」「スプレッドシートを使っている」なら、そちらが選択肢になります。

Excelのバージョン:買い切り版では動きません

条件
ブラウザ版Excel使えます
WindowsMicrosoft 365の契約が必要。ビルド16.0.13127.20296以降
Macバージョン16.46以降(ビルド21011600以降)
Excel 2016 / 2019 の買い切り版使えません
iPad版 / Android版使えません

ここで引っかかる会社が多いはずです。買い切りのExcelを長く使っている中小企業は珍しくありません。その場合はMicrosoft 365への切り替えが先に必要になります。

なおExcel 2021と2024の買い切り版については、公式が対応とも非対応とも書いていません。対応リストがMicrosoft 365の契約に限定されているので期待はできませんが、公式に記載がない以上、ここは断定を避けます。

弊社が何をやらせているか

ここからが本題です。弊社は経理の担当者を置いていません。数字まわりのExcelは、ほぼこれで回しています。

先に範囲をはっきりさせておきます。AIに任せているのは、日々のExcel作業の部分だけです。出てきた数字の確認と、会計ソフトへの反映は自分たちの手でやっていますし、決算と税務の判断は専門家に見てもらう前提で考えています。「全部AIがやっている」という話ではありません。

ファイルやらせていること
見積書過去の見積を参照して新しい行を作る。金額と税の計算
売上集計月ごとの集計、前月との差、抜けている月の指摘
経費明細の仕分け、勘定科目の割り当て
顧客リスト重複の検出、表記ゆれの統一、ステータス別の抽出

会計ソフトから出したCSVも、そのままExcelで開いて読ませています。

指示は、普通の日本語で足ります

使い方を調べると「プロンプトの型」を教える記事が多く出てきます。対象範囲を先に固定しろ、禁止事項を明文化しろ、といった内容です。

言っていることは、間違っていないと思います。ただ弊社は、それを毎回のプロンプトには書いていません。普段の指示は音声入力で、経理担当者に口頭で頼むくらいの言い方です。

「先月の売上、月ごとにまとめて。前月と比べてどうなってるかも出して」

「この経費の一覧、勘定科目つけといて」

「顧客リストの重複、探して」

範囲を絞ることも、やってほしくないことを伝えることも必要です。ただしそれは毎回打ち込むものではなく、一度だけ書いて設定に入れておくものだ、というのが弊社の結論でした。毎回書いていると、書くほうが面倒になって続きません。

これで通ります。Excelの操作を説明する必要はありません。「B列とC列を参照して」といった言い方も要りません。ちなみにサイドバーは音声入力に対応しているので、しゃべって頼むこと自体が公式に想定された使い方です(ただしデスクトップ版のExcelだけです。ブラウザ版では、アドインからマイクを使えないため利用できません)。

型を覚える手間より、次に書くことのほうが何倍も効きます。

AIが知らないのは、Excelの使い方ではなく「うちのやり方」です

使い始めて分かったのは、間違えるのは操作ではないということでした。数式もグラフも問題なく作ります。

間違えるのは、会社ごとの決まりごとのほうです。たとえばこういう類のものです。

  • この取引先だけ、締め日が違う
  • この費用を、うちではどの科目で処理しているか
  • 売上を、入金の月で立てるか、納品の月で立てるか
  • リストのこの区分を、社内でどういう意味で使っているか

どれもその会社の中でしか通じない決まりで、外から知りようがありません。

厄介なのは、間違いに気づけないことです

この手の間違いは、目に見える形で現れません。

  • エラーになりません。処理としては成立しています
  • 出てきた数字がもっともらしい。桁も規模もおかしくないので、見ても引っかかりません
  • 毎回同じように処理されます。一貫しているので、並べて見比べても違和感が出ません

つまり「合計が合っているか」を見ても見つかりません。一般論としては正しい処理をしているからです。見つけるには「うちの決まりごとに沿っているか」という別の目で見るしかありません。

これは数式のミスが安全という意味ではありません

参照先や集計範囲が違っていても、エラーにならず数字は出ます。数式の間違いも、同じように見た目では気づけません。
弊社が言いたいのは「数式は安全でルールだけ危ない」ということではなく、どちらも見た目では分からないので、元データと突き合わせるしかないということです。

最初の1回だけ、突き合わせてください

弊社がやったのは単純なことです。同じ作業を自分でもやって、結果を突き合わせました。
そこで出た違いが、そのまま「うちのルールなのに渡していなかったもの」の一覧になります。弊社はこれを、ルール文書のたたき台にしました。
ただし1回で全部は出ません。その月に出てこなかった取引や例外は、当然そこには現れないからです。弊社もその後、違う処理をされるたびに1行ずつ足しています。

やったこと:ルールを文書にして、先に渡す

弊社はプロンプトを工夫するのをやめて、社内のルールを文章に起こして読ませるようにしました。
勘定科目の判断基準、締め日の例外、売上を立てるタイミング、表記のルール。人に引き継ぐときに書くものと同じです。

一度渡してしまえば、あとは普通の日本語で頼むだけで、うちのやり方どおりに処理してくれます。

これは新しく入った経理担当者に、業務マニュアルを渡すのと同じです。渡さなければ一般論で処理されます。それはAIのせいではありません。

実際に、何を書いて渡しているか

弊社が渡しているのは、だいたいこの4つです。そのまま埋めれば使える形にしておきます。

【分類の基準】
・◯◯の費用は、△△として処理する
・迷ったときは、△△のほうに寄せる

【例外】
・◯◯社だけ、締め日が△日
・◯◯の案件は、他と扱いが違う(どう違うかを書く)

【数え方】
・売上は、◯◯の時点で立てる
・日付は、◯◯を基準にする

【書き方の統一】
・会社名は◯◯と書く(「株式会社」を前に付けるか、省略するか)
・日付は◯◯の形式
・金額は、税別と税込のどちらで持つか

難しい書き方は要りません。新しく入った人に説明することを、そのまま文章にするだけです。

弊社の場合、この文書はA4で数ページ程度です。最初から完璧に書こうとしなくて構いません。違う処理をされたときに1行足していけば、使うほど厚くなります。

毎回貼り付ける必要はありません

サイドバーの設定に、Excelでの会話すべてに適用される指示を登録しておく機能があります。公式の例では「数値は3桁区切りで」「列見出しは常に太字で」といった書き方が挙げられています。
ここに社内ルールを入れておけば、毎回貼り直す手間がなくなります。なおExcelで登録した指示はExcelにしか適用されません。WordやPowerPointとは別管理です。

ルールを書くのは面倒です。ただ、この作業は人を雇ったときにも必要になるものなので、無駄になりません。弊社の場合、書いたおかげで自分たちの処理の揺れにも気づきました。

ミスは減ったか

使い始めた頃と比べると、はっきり減りました。ルールを渡すようになってからは、数字そのものを間違えることはほとんどなくなったというのが弊社の実感です。

ただし、これは実感であって検証結果ではありません

同じ作業を何度も流して精度を測ったわけではありません。お金の数字なので、出てきたものは必ず自分で確かめています。
とくに合計が合っているか、行が抜けていないか。この2つは毎回見ています。ミスが減ったからといって、確認をやめてよい話にはなりません。

公式も、人のレビューなしでの最終的な納品物と、検証なしでの監査上重要な計算には推奨しないと明記しています。

会計ソフトのCSVも読ませています

弊社は会計ソフトにfreeeを使っています。そこから出したCSVを、そのままExcelで開いて読ませています。

会計ソフトの画面は、その中で完結する作業には向いています。ただ「去年のこの時期と比べてどうか」「この科目だけ抜き出して並べたい」といった、少し外れた見方をしたいときには手数が増えます。CSVに落としてしまえば、あとは日本語で頼むだけで済みます。

CSVを読ませるときに気をつけていること

会計ソフトに戻すのは自分の手でやります。読ませて分析させるのと、書き戻すのは分けています。
帳簿は後から直すのが面倒な場所なので、確認の手前で止めるようにしています。

向いていないと感じたこと

何でも任せられるわけではありません。弊社が「これは自分でやったほうが早い」と判断しているものです。

  • 手を動かす回数が少ない作業。数セル直すだけなら、頼むより自分で打ったほうが速い
  • 判断の前提が毎回変わる作業。ルールに落とせないものは、そのつど説明することになる
  • 最終確認。ここは人が見るものとして残しています

逆に効くのは「やり方は決まっているが、量が多い」作業です。経費の仕分け、顧客リストの整理、月次の集計。弊社が任せているのは、全部この形をしています。

簡単に使えることと、安全に使えることは別です

アドインを入れて、日本語で話しかければ動きます。専門知識はいりません。ここまで書いてきたとおり、弊社も難しいことはしていません。

ただ、会社の数字を扱うとなると話が変わります。個人が自分のファイルで使うのと、会社の帳簿や顧客リストで使うのとでは、事故が起きたときの大きさが違います。

1. ファイルの中身が、そのまま指示になることがある

これは弊社の心配ではなく、公式が警告として書いていることです。

公式ドキュメントの警告(要約)

「信頼できるスプレッドシートでのみ使ってください。外部から入手したファイルには、アドインを操作して、データを抜き出す・記録を書き換える・破壊的な操作を行わせる隠し指示が含まれている可能性があります」

さらに踏み込んで、こうも書かれています。
「検証を経ずに動作させた場合には、Claude for Excelが操られて、機密情報を抜き出す・重要なデータを改変する・破壊的な操作を行う、というシナリオがテストで確認されています」

「検証を経ずに動作させた場合には」という条件が付いている点は、正確に読んでください。だからこそ公式は、危険な操作の前に確認を挟む仕組みを用意しています。

つまりセルに書かれた文章を、AIが「指示」として読んでしまう可能性がある、ということです。取引先から送られてきたファイル、どこかからダウンロードしたテンプレート。そうしたものを何も考えずに読ませるのは危険です。

弊社では出所のわからないファイルを、そのまま読ませないことを決めています。

2. どこまで書き換えさせるかを、先に決めておく

書き換えさせるときは、戻せる状態を保っておいてください。

弊社は、元のファイルを直接いじらせないようにしています。控えを取ってから作業させる、あるいは結果を別のシートに出させる。これだけで間違った書き換えは、やり直せる範囲に収まります。

ただしこれで防げるのは、書き換えの事故だけです。ひとつ前に書いた「読ませたファイルの中身が指示になってしまう」ほうは、控えを取っても防げません。いったん外に出た情報は戻せないので、そちらは「何を読ませるか」の段階で止める必要があります。

公式のベストプラクティスにも、「広い範囲の編集を頼む前に、信頼できるコピーから始める」と書かれています。

3. そのファイルに、何が入っているか

顧客の名前、連絡先、取引の金額。Excelには、けっこうな情報が入っています。会社の資産を外部のサービスに読ませているという自覚は、持っておいたほうがいいと思います。

会社で使うなら、押さえておきたい公式の事実

法人で入れる場合、料金や機能よりも先に確認すべきことがあります。いずれも公式に明記されているのに、あまり紹介されていない点です。

入力した内容が学習に使われるかは、プランで違います

プラン既定の扱い
Free / Pro / Maxオプトアウト方式。設定で切らない限り、学習に使われる可能性があります
Team / Enterprise既定で学習に使いません

個人のProプランで会社の数字を扱うなら、設定を確認してください。逆にTeam以上を契約しているなら、既定で使われない状態です。

操作の記録が、管理者向けのログに残りません

公式の記述が、2箇所で食い違っています

Excelのドキュメントには、こう書かれています。
「Claude for Excelは、組織が設定したデータ保持の設定を引き継ぎません。また、その操作はEnterpriseの監査ログにもコンプライアンスAPIにも含まれません」

ところがコンプライアンスAPI側のドキュメントには、Claude for Microsoft 365(Excelを含む)のセッション取得にベータで対応済みと明記されています。取得できるのはプロンプト・応答・ツールの実行結果で、保持期間は既定6年です。

公式の中で説明が割れているので、「記録が残らない」と決めつけないでください。とくに勤務先がEnterpriseなら、あとから中身を取得されうる前提で扱うのが安全です。

入力そのものは30日以内に削除されると公式に書かれています(ただし公式は例外がある旨も併記しており、削除後も数時間はキャッシュに残ります)。会話の履歴は各自のパソコンの中にだけ保存され、別の端末では見えません。直近50件を超えると古いものから消えます。なおブラウザ版のExcelでは、この50件も保証されません。ブラウザ側の判断で消えるため、公式が「一時的なものとして扱え」と書いています。

Copilotとの違いを、契約先で整理する

Claude in ExcelCopilot でAnthropicのモデルを使う場合
実体Anthropic製のアドイン(サイドバー)Microsoft製のCopilot機能
契約先AnthropicMicrosoft
必要なものClaude Pro以上。Copilotは不要Microsoft側の設定。Claudeの契約は不要
監査ログ公式の説明が割れています(取得できる可能性あり)Microsoft側の統制に従います

すでにMicrosoft側でAIを使っている会社なら、後者を検討する余地があります。管理も記録もMicrosoft側にまとまるからです。逆に、1人で今日から使い始めたいなら、前者のほうが手軽です。

なお後者を使うのにどのライセンスが必要かは、公式に明記がありません。既定で有効かどうかも地域によって違うため、法人で検討する場合は自社のテナントの設定を管理者に確認してください。

公式情報の整理(できること・できないこと・入れ方)

ここは体感ではなく、公式に書かれていることをそのまま整理します。古い記事に引きずられている情報が多いところなので、確認しておく価値があります。

できること

できること補足
ブックの内容を読んで答えるどのセルを根拠にしたかが表示され、クリックするとそのセルへ飛べます
複数タブをまたいで作業するタブ間の数式の依存関係も追います
数式を壊さずに前提値を変える「割引率を8%にして、連動する計算も更新して」といった頼み方ができます
エラーの原因を特定して直す「集計タブの #REF! の発生源を探して」
並べ替え・フィルタExcelの機能として実行します
ピボットテーブル2025年11月に対応。編集は2026年2月から
条件付き書式2026年2月から対応しました
入力規則のドロップダウン作成同上
グラフ2025年11月の更新で対応したと公式が告知しています
新しい表やモデルを作る「この試算表から三表モデルを作って」といった依頼も公式の例に載っています

できないこと

公式が「非対応」として挙げているのは、たった2つです。

  • マクロ・VBAの操作
  • データテーブル(What-If分析のデータテーブル機能)

「ピボットテーブル非対応」と書いてある記事は古い情報です

ピボットテーブルとグラフは2025年11月に、ピボットテーブルの編集と条件付き書式は2026年2月に対応しました。
提供開始から仕様がかなり動いている製品なので、読んでいる記事がいつ書かれたものかを確認してください。この記事も同じで、公開時点の情報として読んでいただく前提です。

なおファイルサイズやシート数の上限は、公式のどこにも書かれていません。「500MBまで」といった数字を見かけることがありますが、それはClaudeのアプリにファイルを添付するときの上限で、このアドインの話ではありません。混同しないでください。

勝手に書き換えられるのか

ここは誤解が多いところです。すべての編集に承認が要るわけではありません。公式が用意している安全装置は2つです。

  • 既存のデータを上書きする前に警告する
  • 危険な操作を提案したときは、実行前に確認を求める

逆に言えば、それ以外の編集は自動で実行されます。「毎回確認されるから安心」という理解でいると、想定と違う結果になることがあります。

入れ方:ストアに似た出品が2つあるので注意

手順自体は3つで終わります。Microsoftのストアで入手して、Excelを開いて、Claudeのアカウントでサインインするだけです。

古いほうの出品が、まだ残っています

同じ提供元の出品が、いま4つ並んでいます

「Claude for Microsoft 365」← いま公式ドキュメントが案内しているのはこれ
・「Claude by Anthropic for Excel」「同 for PowerPoint」「同 for Word」← アプリごとに分かれていた古い出品

古いほうも今なお生きていて、説明文には古いURLが残り、対応プランの記載も現行と食い違っています(旧=Pro・Max・Team・Enterprise/現行=有料プラン全部)。
これから入れるなら「Claude for Microsoft 365」を選んでください。検索で上に出てくるのが古いほうであることもあります。

入れたあとの呼び出し方も、覚えておくと楽です。

  • Windows:ホーム → アドイン。ショートカットは Ctrl + Alt + C
  • Mac:ツール → アドイン。ショートカットは Ctrl + Option + C

会社のPCで「入れられない」ときは

管理者がストアへのアクセスを止めている場合、個人では入れられません。Microsoft 365の管理センターから、管理者が配布する形になります。
なお公式が既知の不具合として明記しているものがあります。管理者権限を必要なときだけ有効化する仕組み(Privileged Identity Management)を使っている組織では、配布に失敗します。回避策は、権限が常時ついている管理者アカウントから配布することです。Microsoft側の問題として追跡番号まで公開されています。

画面は英語ですが、日本語で話しかけて構いません

アドインの表示は英語です。公式ドキュメントにも日本語版はありません(日本語のURLで開くと英語のページに転送されますが、これは英語のURLでも同じで、記事の置き場所が移ったためです)。

ただしやり取りは日本語で問題ありません。日本語で書けば日本語で返ってきます。弊社も日本語しか使っていません。

誰でも使えるからこそ、会社で使うときは一度整理してください

AIは、もう誰でも使えます。専門知識がなくても、話しかければ動きます。そして知識を持って使えば、相当に強い戦力になります。弊社が経理の担当者を置かずに済んでいるのも、日々のExcel作業をここに任せられているからです。

ただ、ここまで書いてきたとおり危ない側面もそれなりにあります。外部のファイルを読ませたときの挙動、書き換えの範囲、学習に使われるかどうか、記録が残らないこと。どれも使う前に決めておけば済む話ですが、決めないまま広がると後から手がつけられなくなります。

実際によくあるのが、「便利だから」で各自が使い始めて、誰がどのファイルを何に読ませたか社内の誰も把握していないという状態です。そして先ほど書いたとおり、あとから記録を追えるかどうかは、公式の説明自体が割れています。追えるかもしれないし、追えないかもしれない、という状態で使い続けることになります。

会社で使うなら、最初に決めるのは3つだけです

何に使うか(どの業務まで任せるか)
何を読ませないか(外部から来たファイル、個人情報を含むもの)
誰が確認するか(出てきた数字を、最後に誰が見るか)

多くはありません。ただし決めるには、何が危ないかを知っている必要があります。そこだけは、分かる人に一度見てもらったほうが早いはずです。

後から事故の後始末をするより、先に線を引いておくほうが手間もお金もかかりません。ツールを増やすことより、使い方を決めることのほうが大事だと弊社は考えています。

よくある質問

Claude in Excelは無料で使えますか

使えません。Pro以上の有料プランが必要です。Proは年払いで月17ドル、月払いで月20ドルです。Excelのための追加料金はかからず、いま契約しているプランの範囲で使えます。ただし専用の枠が増えるわけではなく、普段のClaudeと同じ利用上限を分け合う形だと公式に明記されています。なお同じようなアドインをOpenAIも出していて、そちらは無料プランでも使えます

読ませたExcelの中身はどうなりますか

会話の内容と、作業対象にしているファイルの中身はClaude側に送られます。入力と出力は30日以内に削除されると公式に明記されています(例外がある旨も併記されています)。学習に使われるかはプランによって違い、Free・Pro・Maxは設定で切らない限り使われる可能性があり、Team・Enterpriseは既定で使われません。会社の数字を個人のProプランで扱っている場合は、設定を一度確認してください。ここで注意していただきたいのが、「画面に出る履歴」と「サービス側に残る記録」は別だということです。画面で読み返せる会話の履歴は、ご自身のパソコンの中にだけ保存されます(別の端末では見えず、直近50件を超えると古いものから消えます。ブラウザ版のExcelではこの50件も保証されません)。ただし、端末に残るという話は、サービス側に何も残らないという意味ではありません。法人向けには、やり取りの中身を組織が取得できる仕組みが公式に用意されており、その保持期間は既定で6年です。

GoogleスプレッドシートでもClaude in Excelは使えますか

使えません。Excel専用です。配布ファイルの中身でも、対象がExcelのブックだけに指定されています。スプレッドシートで同じことをしたい場合は、OpenAIが出しているアドインが対応しています。

Excel 2019などの買い切り版でも使えますか

使えません。Excel 2016と2019の買い切り版・ボリュームライセンス版は、公式に非対応と明記されています。Windowsで使うにはMicrosoft 365の契約が必要です。iPad版とAndroid版も使えません。なおExcel 2021と2024の買い切り版については、公式が対応とも非対応とも書いていないため断定を避けます。ブラウザ版のExcelには対応しています。

マクロが入ったファイルでも使えますか

ファイルを開いて読ませること自体はできますが、マクロとVBAの操作には対応していません。公式が非対応として挙げているのは、このマクロ・VBAと、What-If分析のデータテーブルの2つだけです。ピボットテーブルとグラフは2025年11月、ピボットテーブルの編集と条件付き書式は2026年2月に対応済みなので、「ピボットテーブルは使えない」と書かれた記事を見かけたら、それは古い情報です。

Microsoft Copilotと両方使えますか

使えます。別の製品なので、Copilotのライセンスがなくてもこちらは使えますし、逆も同じです。混同しやすいのですが、Copilot側でAnthropicのモデルを使う設定は、これとはまったく別のものです。そちらはMicrosoftとの契約になり、管理も記録もMicrosoft側にまとまります。必要なライセンスは公式に明記がなく、既定で有効かどうかも地域によって違うため、法人で使う場合は管理者に確認してください。

指示したとおりに処理してくれません

指示の書き方より先に、社内のルールを渡しているかを確認してください。締め日の例外、勘定科目の判断基準、売上を立てるタイミング。こうした会社ごとの決まりごとは、書いて渡さない限り伝わりません。一般論としては正しい処理をしてくるので、間違いに気づきにくいのが厄介なところです。サイドバーの設定に、Excelでの会話すべてに適用される指示を登録しておく機能があるので、そこに入れておくと毎回貼り直す手間がなくなります。

Claude in Excelがあれば経理担当者は不要になりますか

弊社は現時点で雇っていませんが、「AIがあれば誰もいらない」という意味ではありません。日々の集計や仕分けのように、やり方が決まっていて量が多い作業は任せられます。一方で決算や税務の判断は、専門家に見てもらう前提で考えています。出てきた数字を最後に確認するのも人の仕事のままです。減らせるのは作業であって、責任ではありません。

まとめ

Excelの中でAIが動くようになったこと自体は、もう珍しい話ではなくなりました。差がつくのは、そこから先です。

この記事の要点

・指示は普通の日本語で足ります。範囲や禁止事項は必要ですが、毎回書くものではなく一度だけ設定に入れておくものです
・効くのは社内ルールを文書にして渡すこと。AIが知らないのはExcelではなく、あなたの会社のやり方です
・向くのは「やり方は決まっているが、量が多い」作業。経費の仕分け、リストの整理、月次の集計
無料プランでは使えません。買い切り版のExcelでも動きません
・公式が外部ファイルの危険性を警告しています。出所のわからないファイルは読ませないでください
操作の記録を追えるかどうかは、公式の説明が割れています。あとから中身を取得されうる前提で扱ってください

弊社にとっては、経理の担当者を置かずに済ませるための道具になっています。ただそうなったのは、ツールが優秀だからというより、渡すものを渡したからだと感じています。

うまくいかないと感じている方は、指示の書き方を工夫する前に、自社のやり方を文章にしてみてください。それだけで変わることが、けっこうあります。

AI導入のご相談も承っています

弊社はホームページ制作の会社ですが、社内の業務にAIを組み込んで運用しています。この記事に書いた経理まわりも、読んだ話ではなく実際に自分たちでやっていることです。

そのうえで申し上げると、大事なのはツールの選定ではありません。「何に使って、何に使わないか」を決めること、そして自社のルールを、AIが読める形に書き起こすことです。この記事の中心に据えたのも、まさにそこでした。

何から始めればいいか分からない、社内で使い始めているが不安がある。そうした段階でのご相談も承っています。お問い合わせはこちらからご連絡ください。